◎ llustrator で開くとフォントが化けたり、レイアウトがおかしくなるPDFから、フォントのアウトラインを取り出す裏技まとめ。

2012年7月1日日曜日

Illustrator PDF vector


Illustrator で、フォントをエンベッド(埋め込み)して作成したPDFは、同じフォントを持っていない環境のIllustrator でも問題なく開くことができる。実際に印刷物を作る際、フォントをエンベッドしたPDFで出稿している。

しかし同じPDFでも、Office系やプリンタードライバー系などで作成したPDFは、Illustrator で開くとなぜかフォントまわりで、いろいろ問題が生じる。最近はあまり見かけなくなっていたが。

先日、ある作業用に渡されたPDFは、llustrator で開くと、多くのフォントが、「アピアランスを保持するために」とIllustrator側でアウトライン化されているが、いくつかが、「?」マークが羅列されるなどの文字化け。文字詰めもおかしく、重なり合っている。

このPDF作成に使用したソフトは、このブログの「無料のソフトでフォントをアウトライン化する方法」でも触れたLibreOffice.app。

そこで、サンプルを作って問題が再現するか試してみたところ、Illustrator で開くと同様になった。下の画像で上が正しく表示されたフォント、下がおかしな状態のフォント。ちなみに、Inkscape.appで作成したPDFもどうやら同じようになる模様。

同じPDFなのに何が違うのか? ポストスクリプトのフォント名の表記の問題でllustrator が認識できないのかも知れない、と問題が生じるPDFとそうでないPDFの内部構造を比較するためバイナリーエディターなどで開いてみたが、わずかにフォント名の表記方法が違っているものの、私のスキルでは、問題箇所を特定することはできなかった。

また、渡されたPDFはファイルの破損も考えられるので、Mac標準のプレビュー.appAdobe Readerで開いて確認したが、これらではきれいに表示されるのでその心配はなさそう。フォントのアウトラインさえ取り出せれば、作業が進められる。

そこで、以前一緒に組んで仕事をしたデザイナーさんから教えてもらった裏技?などをやってみたところ、なんとかアウトラインを取り出すことができて、ことなきを得た。

普段、llustrator で作業される方達にとっては、周知のことなのかも知れないが、自分のための備忘録として書き留めておくことにした。

裏技 その(1)Macならプレビュー.appで
  • 問題のあるPDFをMac標準の「プレビュー.app」で開いてみる。
  • プレビュー.appできれいに表示される場合、メニューから、【 ファイル 】→【 プリント…を選択して表示されるプリントダイアログの左下【 PDF▼ 】ボタンをプルダウン、【 PDF を PostScriptとして保存… 】で保存する。
  • でき上がった拡張子「.ps」のファイルをllustrator で開く。
  • うまくいけば、フォントがアウトライン化されて、llustrator から編集できる。フォントのタイプによるようなので、ちょっと運まかせな方法。
裏技 その(2)Acrobatで強制的に変換
Acrobatがある場合に限るが、透明オブジェクトを分割する際に強制的にフォントをアウトライン化してしまう仕様を逆利用する(Acrobat 6以降で可能)。
Acrobatは古いバージョン(Windows版 Acrobat 7)しか持っていないがやってみた。
(注意:Acrobatのバージョンにより、以下の項目の表示場所は大きく違います)

 Acrobatで問題のPDFを開く。
 透明オブジェクトを追加する。
  • メニューの【 文書 】→【 透かしと背景の追加 】を選択、「透かしと背景の追加」ダイアログが開く。
  • 種類」で「透かしの追加」を選択。「印刷時に出力」のチェックは外す。
  • ソース」で「テキストから」を選択。適当なテキストを入力。
  • 位置と表示方法」の「不透明度」を100%以外の数値に変更。
 透明部分の分割・統合。
  • メニューの【 ツール 】→【 印刷工程 】→【 透明部分の分割・統合 】を選択、「分割・統合プレビュー」ダイアログが開く。
  • 分割・統合の設定」の「ラスタライズとベクトルのバランス」を「100」に。
  • 分割・統合の設定」の「すべてのテキストをアウトラインに変換」をチェック。
  • PDFに適用」で「現在のページ」をチェック。

  • 【 適用 】ボタンをクリックし、【 OK 】ボタンボタンをクリックして閉じる。
  • メニューの【 ファイル 】→【 名前を付けて保存 】から「ファイルの種類」を[ EPS ]にして保存する。
これをllustrator で開けば、アウトライン化されたフォントを編集できる。
この方法は、ちょっとプロセスが面倒、慣れればどうということはないのだろうけど。あまり慣れるような状況になりたくはないが。

裏技 その(3)PDFをllustrator に配置してしまう
  • 問題のあるPDFをllustrator で扱うが、直接開かない。
  • 新規ドキュメントを作成し、【 ファイル 】→ 配置 】でPDFを配置する
  • 配置したPDFを選択しておいて、メニューの【 オブジェクト 】から【 透明部分を分割・統合…  】を選ぶ。ダイアログが開くので、ラスタライズとベクトルのバランス」を「100」に。すべてのテキストをアウトラインに変換」をチェックし、【 OK 】ボタンをクリックする。
  • すべてのフォントが、アウトライン化される。
  • アウトライン化されたオブジェクトは、クリッピングマスクやグループを解除し、ダイレクト選択ツール(白い矢印)などを使って編集できる。
この方法が手っ取り早く、他のソフトも使わずに済む。llustrator CSからCS4で検証した。

いずれの方法もフォントにプロテクトがかかっていたり、特殊なフォントの場合、アウトライン化できないことがある。また、アウトラインの品質はあまり良いとは言えないので、大きく拡大して使用する場合は、アウトライン化したものを再送してもらった方が良さそう。

注意:アウトライン化したものをそのまま販売したり、会社ロゴに使ったりなどすると、たとえ商用利用フリーのフォントであってもライセンス違反になるので注意が必要。